所感
戦後七〇年の歳月が経過し、我が国は先人の懸命の努力により、経済的繁栄と
ともに成熟した道を歩み、国際社会の中で責任ある地位を築いた。
歴史の歯車の回転が少しずつ早まっている今、世界の潮流に対し我が国も様々な
難問への対応が迫られている。
将来に向けて、平和とさらなる繁栄を切り拓くためには、適時適切な判断のもと
政治の果たすべき役割は大きい。
安倍首相は、第一次の組閣の際に標榜した「美しい国、日本」の中で、いくつもの
課題を指摘し、課題解決と国際貢献への道筋を提示した。その後、日本を取り巻く
状況はさらに複雑化・深刻化を増しているが、その方向性は今も変わることは
ない。
無軌道な軍事力を誇示する勢力の勃興が国際秩序を揺るがせる混沌とした今こそ、
繁栄と飽食によって失われた古き良き日本の矜持と美俗を回復し、我が国が進む
べき道筋を堂々と内外に表明することで「国家の品格」を示さなければいけない
のではないか。
安保法案が可決し、安倍政権が一つの目標としていたことが達成された。
決定までの間様々な議論があったが、政府においては丁寧な説明で、国論を
まとめて行く責務がある。
国を守ることに関して、古い書架から適切な言葉を見つけたので引用する。
「平和について多弁であるものが平和について熱心なものとは限らぬ。
同時に、口に多く平和を語らないものも、心には切々として平和を願っている。
平和はただ力によって守られるものではないし、また力のみによって守られて
よいものでもない。
けれども、今日の世界の現状において平和は何の防備もなく、ただ各国民の
好意と理解によって十分守られて 心配がないというのは事実に反する。
もし一国の国民がみな、苦しいことは御免だ、危ないことは真平だと逃げ廻って
ばかりおれば、自分の国、即ちわが妻子の住む国、祖先のものであり、
子孫のものでもある、この日本という国の独立を守ることはできない。」
小泉信三 (昭和三十三年 防衛大学校卒業式祝辞より)
平成二十七年 秋
2015年10月5日